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2011年11月

2011年11月30日 (水)

第一章 輪舞する星々 No.5

No.5
はるか滝の上から眺める如くに自分の身体が下方に横たわるのが見える。

テスラは、自分自身はどうなっているのか心配になった。
左半身を覗かせると、何とも美しい黒揚羽蝶になっているではないか?!翅は馬頭星雲の彼方まで延び、信じられないスケールで展開した。
意識はだまされまいとするが、心眼は、見えるままをうけ入れメタモルフォーゼを幻覚ではないと捉えていた。
テスラの科学と常識がハッキリと禊ぎを受けた瞬間である…。

死とは、消滅からほど遠もので、
自己と云う概念も、見かけ倒しでしかないことに、テスラは唖然とした。

2011年11月28日 (月)

第一章 輪舞する星々 No.4

No.4
それにしてもここは何処なのか?
ベッドから身を起こしあたりを見回すと、あることにテスラは気づいた。自分の身体はベッドに横たわったままなのだ!


「やはり!自分が見えるとは、私は霊体となって身体を抜け出ているに違いない。」そう思うと、できるだけ気持ちを落ち着かせ、上昇を試みた。
しかし、天井付近に漂うのが精一杯で外には出られない。
我ながらスローな行動が嫌になった。

2011年11月27日 (日)

第一章 輪舞する星々 No.3

ラジオが告げたのは…、
いや、それはともかく自分が死んでしまったのかどうかを確認することだった。八十余年にも渡って強烈に興味を持ってきた死後の世界である。
自身、永年物理学の異端を歩んできたが、死後の世界は、科学をもってしても爪の垢ほどの認識も役立たないことも分かっていた。唯一うまくはないが続けてきたバイオリンは、ときとして死後の魂の存在を予感させてくれてはいた。
死を越えたのであれば四十九日間この世に留まり、その後にここを離れるはずである。それからだ!いや、急いではならぬ!

薄汚れたこの世にも未練は無かった。老人をさも汚いゴミのように扱い、この世しか知らぬ底意地の悪い奴等に、できるなら魂の永遠性を見せつけてもやりたかったのだ。

2011年11月25日 (金)

大賢者 第一章 輪舞する星々 No.2

それからあとはまったく判然としないまま見覚えのないベッドに目覚めた。

テスラは、ぼんやりと死ぬことに失敗したのを苦々しく思ってあたりを見た。しかし自分の見たことのない風景に、ひょっとすると行動は成功したのかとも思った。

田之宮テスラは八十六歳になっていた。
この歳になり自ら命を絶つ行動に出たのは、ある出来事を境にしてであった。それはあの奇妙で懐かしいラジオブルキナの放送を六十数年ぶりに突然受信したことにある…。

2011年11月24日 (木)

「大賢者」第一章 輪舞する星々 No.1

お待たせしました。
これから始まる「大賢者」は、かって連載された「天頂の惑星」の、外伝 にあたる物語りです。

「大賢者」第一章 輪舞する星々No.1

夜の海は、空との区別もつかずまっくらで、波の茫漠としたくり返す音だけが海を現実のものにしていた…。
田之宮テスラは、ひとり見えない海を見ていた。この海に入り死ぬつもりだった。

予告もなく突然、空中に閃光が走った。
巨大な闇のハミングと一陣の気が暗黒の海から起こると、得体の知れぬ何者かが、暗闇の空にいちど大きく上昇し、大風の如くドォとテスラの前に押し寄せた。
グイグイとテスラを押し戻し、身体は一瞬に吹き飛ばされた。
見えないそれは、テスラの心にはハッキリ龍に思われた。

…それまでは覚えている。

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