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2012年4月

2012年4月28日 (土)

大賢者 第二章 生まれ変わりの印 No.46

No.46

「コントンボリ、黄泉の入り口というのはまだ遠いのか?」木琴弾きのジョロボが言った。

「ああ、まだまだだ。貴様の人生もキビシーだろ?まっくらけの夜中に分かってくるんだ人間は。」

「あの光はなんでしょう?」

アサビコが指を差して言った。

「あれか?あれなら、狐の行列の鬼火じゃろ。仲間の娘の婚礼で嫁入り行列をやってるのじゃよ。狐も祭りの好きな動物じゃ。」長老が煙草を一服付けて言った。

「人生は短…、やや!その銀紙に包まれた褐色のかぐわしいものは?チョコレート!」コントンボリはアサビコのポケットを覗き込んだ。

「そう、これはジジから貰ったんだ、いざという時の食料にと。」

「俺によこせば君を幸せにしてあげてもいいぞ!いますぐにでも!俺はチョコに目がないんだ!アサビコ君、俺の開いた口によこしたまえ。アーン。…でなければ黄泉は分からんぞ!」

2012年4月27日 (金)

大賢者 第二章 生まれ変わりの印 No.45

No.45

「コントンボリはボーリ神の眷属だが油断のならん神じゃ、アサビコには後見が必要とみて、ワシが付いて行くことにした。黄泉へのショートスティてとこじゃな、ふふふ。」長老のサラガウラが言った。

「まったく、年寄りなど出る幕ではないぞ、黄泉というキビシー道のりが待ってるのが分からんか。」

「ふん、コントンボリよ、黄泉というのは、年寄りが行くところじゃ、たわけるでない。」

長老の声を尻目に、コントンボリはうそぶくように足を速めた。四人は一列になって踏み分け道を列車のように急いだ。

しかし、長老の足の達者なこと、逆にコントンボリがへばってしまった。

夜道は満月の月明かりに照らされて昼のように明るく、遠くの木のシルエットがはっきり分かるほどだった。四人は大きな岩の前に来た。

「はあ、この大きな岩の上で一休みしよう…。俺のような、お年寄りに慈悲のある神でよかったな、なあサラガウラよ。キビシー人生に休みは必要じゃろう?ところが、これがボープラ様ならゆるされぬ。」

「おあいにくじゃな厳しさ結構、ワシの人生は厳しく豊かじゃ。ははは、まだへばってはおらんぞ。棺桶に片足が入ったとて、一晩二晩なんでもないわ、ははは。」

岩の上は意外なほど見通しがきき、夜道の遠くに不思議な青い光がぼうっと見えていた。

2012年4月26日 (木)

大賢者 第二章 生まれ変わりの印 No.44

No.44

「ワニ神の言うことは本当です。コントンボリが黄泉の国を知るので道案内を頼みなさい。今すぐにでも旅立ちなさい。…これを持って行きなさい、きっとコントンボリは言うことを聞き入れるでしょう。」

巫女は、掌に入るほどの小さなお守り袋とウィリという矢の形をした小笛を、アサビコに手渡した。アマナのお告げは、アサビコとコントンボリとに加え、木琴弾きの男を黄泉のヒラサカへと出発させた。

 

「俺様が小僧の道案内とは、ほんと、恐れ入るな。俺はボーリの眷属だぞ、そのくだらん聖なる笛さえ無ければ、小僧のいうことなどを聞くものではないが、それを吹かれると俺は弱い、それは…。まあ、それはそうと君たち、夜道に気を付けなさい、妖怪なども出るしアブナイからね。ヒヒヒ」

コントンボリはお茶を濁して、伝統的な服の裾を捲し上げ、三人を先導した。三人というのは、村の長老も同行したからだ。

2012年4月24日 (火)

大賢者 第二章 生まれ変わりの印 No.43

No.43

「わ、われらの御子の身体は禿鷲に食われ復活しようにもすでに何も無い。魂は身体が無いと戻れない。

お、お前が魂を受けられたなら、われらは白い人は殺さない。戻らなければ、どこまでも追いかけ必ず全部殺す。

た、魂が戻れるまであと七日だ。それまでに戻れなければもう魂は戻れない。」

三筋の傷のある男が片言の喋りで言うと、アサビコが大声で答えた。

「ぜったいに戻ってきます!何があっても!」

 

深々とした被り物をしたアマナは一瞬アサビコの声にびっくりしたような態度をしたが、まさかと思い直したように杖の巫女に耳打ちした。

「ワニ神の魂が憑いてもワニになってしまうわけではない。また、あなたの命を失う分けでもない…。だが、今すぐにも黄泉の国のヒラサカまで行き、ワニの御子の魂復活の儀を行わねばならぬ。…その先はアマナ様にも何が起こるか分からないそうだ。」巫女がそう告げると、コントンボリが、後ろの三本筋の男達になれなれしくいるのを見てまた何かを告げた。

2012年4月22日 (日)

大賢者 第二章 生まれ変わりの印 No.42

No.42

すると群衆からどよめきが起こった、一発の銃声がしたからだ…。

「取り込み中に失礼する!この騒ぎのもとはわれわれだ。われわれはまもなくここを出て行く。長老には迷惑を掛けすまない。この背の高い連中はワニの部族と言うが、こちらに危害を加えるなら、このとおり銃で防衛のため戦うぞ!」隊長のアントワーヌが立ち上がり三本筋の男の前に出た。

「アントワーヌ、せっかくの調停を無にしてはまずいな。ワニを撃ち殺したのはこちらが悪い。ここは任せよう。」医者のジジが割って入った。するとアサビコが言った。

「私にさせて下さい!ワニの魂を私に降ろして復活させて下さい。通してくれれば何もしないとワニ神に約束した私に責任がある。私の命を差し出します。」

「ほう、お前は若いが勇気が有るな。ワニになっても構わんというのか?」コントンボリがびっくりしたように言った。

2012年4月21日 (土)

大賢者 第二章 生まれ変わりの印 No.41

No.41

「まあ、待て待て、俺様の出番が無くなるじゃないか。少し待ちなさい。もう少し高貴な登場しようと思ったのにしょうがねえな、俺はコントンボリだ。」

そう言うと、祭壇のボーリ像に供えられていた奇妙な土偶が変化して人の形になった。

杖の巫女が声を張り上げた。

「アマナ様はこう言っておられる、コントンボリの言うことは半分も信用できない。

ワニ神よ、ボーリ様が聞き届けてくれない以上、アマナ様は殺された日嗣の御子の魂を、黄泉の国にて誰かに憑依させ復活させると言っておられる。益の無い報復は思いとどまりなさい。」

 

「む、なんと阿呆な!俺なら白黒二頭のヤギの生贄と、人間の子供一人の犠牲でいい。どうだ?さすればすべて丸く収めようぞ!」

中庭は、異形の者達の喧噪と木琴の音で溢れた。

2012年4月19日 (木)

大賢者 第二章 生まれ変わりの印 No.40

No.40

中庭の入り口から、ジナベという流暢な歌の吟唱が高らかになり、古風な伝統服を纏った背の異様に高い男たちが数人、長い杖を突き突き入ってきた。坊主頭に切れ長の鋭い目つきは、狩猟に長けた部族の者どもだと一目で分かった。

「おぬしらの中の白い人をワシらに渡してもらおうか!」先頭の、頬に三筋に傷のある男が辺りを見回し言った。

「ほう、何じゃね。この白い人たちのことかね?それなら断る。精霊との約束は守らねばならないのでな。」

長老は落ち着いて返答した。

「ワ、ワシらの日嗣の御子を白い人に殺された。その報復に白い人全員の魂貰いに来た。じ、邪魔すると為にならん。」三本筋の男は少しどもって言った。

「あんたら、ワニ神様じゃな?」

長老は目玉をギョロつかせて大声を出すと背後の祭壇の方からも声がした。

2012年4月17日 (火)

大賢者 第二章 生まれ変わりの印  No.39

No.39

「何を生意気な、ボープラ様の出るまでも及ばぬ!おれがワニ神に取りなしてやる。おれを祝祭すればよい。」

「コントンボリ、おまえの力は知れている。祝祭してもよいがワニ神は納得しない。おまえでは必ず七人とも救済できまい。」

「気の優しいおれもさすがに怒るぞ!救ってやるとも!祝祭を始めなさい。おれなら祝祭を半月にサービスしておく。しかも現物払いでもよいぞ!おまえら人間ごときのくだらん願いのすべてを誠意のディスカウントだ!今そこに行くから待っておれ!」

そう言い終わりアマナの巫女は正気を取り戻した。

それと同時に、子供らが口々に、村に祀られているボーリ像を指差した!指差す先には光彩が現れ、予兆に満ちた光の乱舞が起こった。

2012年4月14日 (土)

大賢者 第二章 生まれ変わりの印  No.38

No.38

ささっと場が開き、しばらく激しいリズムに乗り踊ると、すっと再びもとに戻る。土煙を上げて次の女が場に進入して来る。三倍速の激しい痙攣のリズムに歓喜の表情を見せ踊ったかと思うと、すっと場から消える。太鼓を打ち叩く男は煽りの激しいリズムをそこで添加する…。

アマナの斜め後ろの女が、急にぐったり白目を剥き何者かが憑依してきた。

「ウーム!おれは、ボーリ様の眷属コントンボリだ!場合によっては希望を叶えてやらんでも無い。」

声だけが女の口から太く言う。

太鼓は、たき付けるのを止め、木琴は激しい高低を繰り返し、ぴたりと止まった。ゆるやかにアマナの口が動き、その言葉を杖の巫女が大声で喋った。

「コントンボリよ、ボープラに伝えよ。ワニ神に命を見込まれた白人の延命を願うぞ!ここに今日より三ヶ月の祝祭を催す。」

2012年4月13日 (金)

大賢者 第二章 生まれ変わりの印 No.37

No.37

「われわれのことで、そこまで迷惑は掛けられない。救援が来るまで一ヵ月も掛からないだろう。それよりも、川を下る船はないか?大きな町まで出ればなんとかなる。」

アントワーヌは地図を指し答えた。

「隊長どの、ワニ神をみくびっては大変なこととなる。アマナの言葉とおりボーリに願う以外ない。」

そのうちアマナは木琴の音に感応して、神懸かりとなり、周囲の女達はアマナを支えながらも、あるものは急速に入信状態に落ち入った。

木琴に、いつの間にか太鼓とベルも加わり、取り巻いていた群衆は興奮状態になって踊りだした。その場は喧噪と神聖が入り交じる祝祭と化した。

踊る輪は中庭から溢れて、音を聞き付けた人が仕事を打ち捨てて集まって来た。木琴と太鼓はますます調子を上げ、すべてが、浮揚感に、大きなうねりのようになった。

白い衣装を回転させた巫女集団のひとりが、何者かに突然取り憑かれ走り出た。

2012年4月 9日 (月)

大賢者 第二章 生まれ変わりの印 No.36

No.36

そのうち辺りが騒がしくなって、真っ白な衣装を纏った一団が、風のように入って来た。先頭の女の肩に引かれて、百合のような美しさを放つ盲目の女が中心にいる。十人ほどの女達を、子供と群衆が後を取り巻き、庭の奥の長老の前に来た。

「やあ、アマナ、お前様の言ったとおりじゃな。ここの連中は、身から出た錆とはいえ、仲間も船も失い難儀しておる…。」

すると、杖代わりをしている女が何やらアマナから耳打ちを受け、答えた。

「アマナ様は同情しておられる。こう言ってます。ワニ族は大事な御子を殺され、たいそうな怒りでいます。強い復讐心は収まっていません。ボーリの精霊に救命を願いなさい。」

「おお、ボーリに願うのか?それには木琴とダンスと生贄が欠かせんな。それも少なくとも三ヵ月は必要じゃ。」

長老は、大きく口を開き煙草の煙を吐いた。木琴を弾いていた男が、ゆっくりと手を止めると天を見上げた。

2012年4月 7日 (土)

大賢者 第二章 生まれ変わりの印 No.35

No.35

そのとき中庭の大きな木の陰で、男が木琴を始めた。明るく深い音色は、軽やかに木漏れ日の陰を揺れて転がった。

アサビコは縁台に寝転んでなにげなく聴いていた。聴いていると不運を忘れて、まあいいじゃないかという気分になってくるのはどうしたことだろう…?

隣のジジも、やけくそか、微睡んでいた。

アントワーヌ他、二、三の隊員は、庭の片隅で、必死に地図に何か書き付け顔を突き合わせ会議をしている。入り口付近では、発砲した男が女をからかっていた。

木琴の調子がゆっくりしたものから速いものに変わり、俄に場が活気づいてきた。

庭には、髪結いやら、行商やら、繕い屋などが、入れ替わり立ち替わりやってくる。

2012年4月 5日 (木)

大賢者 第二章 生まれ変わりの印 No.34

No.34

老人は村の長老で、自らの自宅に加え、中庭付きの藁葺きの家を提供してくれた。

「あんたらが来るのは分っていたよ。困った時はお互いさまじゃ。それにしてもアマナの予言のなんと当たることじゃろうて…。水の苦難の者が外からやってくるとな。あたま数までもぴったり七じゃ!」

「そのアマナとは誰でしょう?」

アントワーヌが聞いた。

「アマナは不思議な娘だ…。アマナには凄い精霊が宿っている。目は全く瞑れて見えんで、あたまもいっちまってるように見えるんじゃが、女だけの集団を率いてこの辺りを巡っている。女は黄泉国から来たと言っている…。こうしてわれわれに占じたことを述べて皆の糧を得ているが、ここの者達ではなかろう。」

長老は、抜けた歯の隙間に煙草を挿み、一服つけて言った。

「そのうちここにも、やてくるじゃろうて…。」

2012年4月 2日 (月)

大賢者 第二章 生まれ変わりの印 No.33

No.33

陸には薄汚い伝統服の老人がひとり岩に腰を下ろしてこの光景の一部始終を眺めていた。

「むむ、悪いのは白人だな。ワニは川の神様だ。粗末で野蛮な行いは、ここでは慎まねばならん。」泳ぎついた隊長や、ジジとアサビコに向かって言った。発砲した男は隊長に胸ぐらを絞められ、言い訳をした。

「俺が悪いわけではない、こんな日本人の小僧ごときに何ができるというのです。ワニは凶暴だ、それを教えたかっただけです。俺のせいじゃ無い!こんな事態は想定外だ。」

「きさまのようなやつこそ想定外だ!今すぐクビだ!」

アントワーヌが怒鳴った。

機材と食料と人員を失った探検隊は、老人の村に入り救援を待つことになった。

 

2012年4月 1日 (日)

大賢者 第二章 生まれ変わりの印 No.32

No.32

アサビコは即座に、隊長アントワーヌの信頼を得た。しかし、隊員の中には日本人の小僧が、と思う者もいて、嫌がらせに岸に発砲した者がいた。その弾が子供のワニに命中した。

銃の響きに、あたりは静まり返った。すばやく岸辺のワニたちは水中に姿を消した。不気味な静けさの中、船ではジジが発砲した隊員に猛烈に抗議をまくしたてていた。船の右舷にみるまに巨大な影が浮き上がって、たちまちに船は転覆した!

十五人近くの半数が命からがら岸に泳ぎ着いた…。

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