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2013年7月28日 (日)

第七章 信じようと信じまいと No.109

No.109
「イタチめ!岩を伝わって逃げたな!大人、少々お待ち下さい。」
そう言うと鴫童子は、瞬く間に鼬鼠の後を追い、岩に消えた。
「シギよ、深追いは禁物だぞ!」大人の声が虚空に響いた。
大きく旋回して、宙の人魂の一つがするりと延命冠者の背に入った。

「…これは、どうした…ことだ?」
倒れていた延命冠者が、息を吹き返した。
「おおっ、正気に戻られたか。」
茫然自失ながらも延命冠者は立ち上がると、一周りゆっくり見回し言った。
「…目出度いかな、目出度いかな。
我らの魂魄が幽界を彷徨っておるところを、あなた様に救われた…。
お礼に一つ極上の舞を致しましょうぞ。」

白い砂地に、摺り足に輪を描き広げながら、延命冠者はそこに不思議な舞を舞った…。
足先が進むにしたがい、次第にその姿は透明になった。
やがて舞も延命冠者も見えなくなると、白砂の上の跡だけが残ったが、それも掃き清められるように無くなると、風が遠くに渡った…。

「見事に何も無い…。」
そこには清浄なる無音があるばかりだった。
松風大人は、茫洋たる虚空に無際限のいのちを見る思いがし、おもわず再び感嘆の息を洩らした。
「むむっ、…見事に何も無い。」

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